2021年02月10日
2020年12月21日、オンラインにて「withコロナの時代を支える社会貢献セミナー」を開催しました。
感染症拡大の経過に伴い、社会課題が変容し支援ニーズも変化する中、企業の社会貢献担当者や中間支援団体、NPO等活動団体の皆さん、約200名が参加され、基調講演、企業・団体の事例報告、パネル・ディスカッションを通して、「コロナ禍から見る社会的課題と、市民(個人、企業市民)が社会の一員として求められていることは何か」について考えました。(開催レポートPDF版はこちら)
プログラムと概要は下記の通りです。(参照:開催要項、登壇者プロフィール)
◆開催日時 2020年12月21日(月)15:00〜17:15( Zoomウェビナーにより開催)
◆プログラム
1.主催者挨拶(社会福祉法人中央共同募金会 常務理事 渋谷篤男)
2.助成事業に見るコロナ禍での緊急支援活動(報告)(15分)
「赤い羽根の新型コロナ感染下での緊急支援助成プログラムについて(中間報告)」
社会福祉法人中央共同募金会 基金事業部長 秋貞由美子
赤い羽根のコロナ関連としては、他に先がけ昨年3月から「臨時休校中の子どもや保護者を支えよう」と緊急支援の募金&助成プログラムを立ち上げました。5月からは「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン」へ規模を拡大し、子どもや家族の支援、フードバンク支援、居場所を失くした人への支援、草の根活動支援の4つのプログラムを実施。のべ1900団体へ総額8億円以上の助成を決定し、現在も継続中です。
★助成事業報告サイトはこちら
3.基調講演(40分)
【タイトル】「危機の時代」を生きる者の使命
【講 師】神野直彦氏(日本社会事業大学学長/東京大学名誉教授)
「『コロナ危機』は、もともとあった社会の問題がコロナにより顕在化したにすぎない。私たちは『危機の時代』に生きている。それは『歴史の転換期』であり、人類が破局へ向かうか、肯定的解決へ向かうかの分岐点に立っている。」と語る神野氏。
「社会貢献活動とは、人間の社会の共同の困難に、解決者として行動すること」であり、この危機を乗り越えるために、私たち一人一人が分かち合いの心を持って、人と人との関係を結び直し、主体的に参加・行動する社会へ転換する必要がある。そのためのライフサポートプラットフォームが重要であると、財政学の知見も交えてお話しいただきました。
4.パネル・ディスカッション(事例報告、質疑応答含む)(1時間15分)
【テーマ】「withコロナの時代を支える社会貢献について」
【コーディネーター】長澤恵美子氏(一般社団法人日本経済団体連合会 SDGs本部統括主幹)
【パネリスト】(報告順)
・阿部孝宏氏(三菱電機株式会社 総務部 社会貢献推進課)
・濱田尚氏(日本たばこ産業株式会社 サステナビリティマネジメント部)
・奥田知志氏(認定NPO法人抱樸 理事長)
・仁藤夢乃氏(一般社団法人Colabo 代表)
基調講演をふまえて、「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン」助成の活動団体、企業で社会貢献を担当されている方々と共に、今後の実践へつなげるために、「withコロナの時代を支える社会貢献」について考えました。
まず、経団連・長澤氏から、コロナ禍における企業の社会貢献への意識や支援の高まりについて、経団連のアンケート調査からご紹介いただきました。何らかの形でコロナ関連の支援を実施または予定している企業が87%にのぼる一方で、支援先や支援期間・方法などに課題を感じてもいるとのことです。
◆経団連アンケートは、こちらからご覧になれます。
三菱電機・阿部氏からは、設立から29年を迎える三菱電機SOCIO -ROOTS基金(従業員募金+マッチングの法人寄付)と、その枠組みの中で臨時休校緊急支援に多額の寄付が寄せられたことが紹介されました。
1,500名以上の従業員から総額1千万円を超える賛同をいただいた蔭には、一人一人のメッセージを社内で紹介したり、社内報に使途や活動風景を掲載したり、募金状況を示しつつ期限までのカウントダウンを行ったりと、さまざまな工夫があり、そうした地道で着実な働きかけが寄付への動機づけにつながったそうです。
日本たばこ産業(JT)・濱田氏からは、「コロナ禍での居場所支援」への寄付に関して、社会課題を抽出して寄付に至るまでの社内プロセスと、従業員寄付+マッチング・法人寄付・食品寄贈等の多様な支援の取組みについて、お話しいただきました。
特に、社会的価値と事業的価値による検討プロセスに、参加者の関心が集まりました。
北九州を中心に生活困窮者の支援活動を続けている抱樸・奥田氏からは、支援事業のうち、居住支援を中心に報告いただきました。コロナ禍で住居を失う人が急増しており、特に住込み型の就労では失職が即住居喪失につながります。また、2020年10月の自殺者は昨年度の4割増にのぼり、今後コロナ関連死が急増する恐れがある。
そこで、抱樸では単なる住宅確保に留まらない、総合的生活相談や包括的な支援付住宅など、ひとりひとりの状況に合わせたきめこまやかな支援を展開しています。
Colabo・仁藤氏からは、コロナ禍による親の在宅化や貧困が、子どもたちへの性暴力や虐待につながっているとの報告がありました。特に、公的支援が届きにくい十代の少女たちが孤立し、そこへ乗じた買春やJKビジネス等の性搾取被害が深刻化しています。
特に、この春からの相談者が急増し、千人にのぼる中で、Colaboでは、ホテルとの連携でシェルター数を増やしたり、無料カフェなど繁華街でのアウトリーチを強化して必要な支援につなげています。
以上の報告や基調講演をふまえてパネル・ディスカッションが行われました。
「現場の率直なニーズをもっと知りたい」という企業側と、「ぜひ現場の声を聞いて見て知ってほしい」という支援団体。
共通した認識は、「コロナ禍以前にあった社会の問題が、コロナ禍により露わになって噴出している」ことです。
状況を打破するには、1団体や1企業の取組みだけでは足りず、「課題を共有できる場」を作り、多様なセクターが連携しあって、社会のしくみを一緒にデザインしていくことが求められています。
長澤氏は、「そのために、私たち一人一人が、想像力と創造力とつながる力をもつことが大切」だと語りました。
共同募金会には、支援を必要とする側と支援する側とを大きな枠組みでつなぐ、プラットフォームとしての役割が、一層求められています。