都道府県 東京都
助成額 850,000円
活動開始日 2021/7/1
活動終了日 2022/3/31
助成金で行った活動の概要
①中央共同募金会の助成を受けて、2020年より東海地区におけるラテンアメリカ系集住地区にて「こころと身体の健康相談会とシャーガス病の検査」を開催し、定住外国人の健康維持に関する支援活動を実施した。第3回居場所支援では、可児市(12月5日)・亀山市(3月27日)・小牧市(4月24日)において現地相談会を開催し、医師や精神科医、検査技師による相談やシャーガス病の検査を行った。こころの問題は一人45分間精神科医に相談できる場を設けた他(葡語と西語の通訳付き)、こどもの発達障害を疑う親や子供の問題を抱える保護者からの相談希望が相次いだため、亀山と小牧の相談会ではこども心理専門の臨床心理士も参加してより的確なアドバイスを行い、必要に応じて医療機関に繋ぐことができた。継続しての相談希望者には、月に一度オンラインで相談を行っている。 ②また、精神保健分野に関する基礎講座として、現地の通訳者やキーパーソンとなる方々へのオンライン研修会を開催した。精神科の通訳は、日常のコミュニケーション通訳や一般医科通訳とは異なる知識や特殊な状況下での通訳が求められるため、正しい知識の習得が不可欠となる。精神科医による4回の講義を通じて、基礎的な知識や、通訳者と相談者の距離の取り方などの研修を行った。また今年度に入ってからのオミクロン株によるコロナ感染者数が急増したことから、新型コロナウィルス感染症とワクチン接種、後遺症などについて感染症の専門家による講義と、ブラジル人医師による日本とブラジルの医療機関の違いなどの講義を合わせて全6回開催した。研修会にはキーパーソンの他、NPO関連のスタッフ、感染症に携わる医療専門家など多数の希望者が参加した。 ③4月27日に2020年8月より4団体が協働して行った事業の総括として、「こころと体の健康相談会&シャーガス病検査」事業の報告会を実施した。(参加者24名:厚生労働省・出入国在留管理庁・名古屋出入国在留管理局・三重県防災危機鈴鹿総合事務所・愛知県多文化共生推進課・鈴鹿保健所・鈴鹿市・亀山市・朝日新聞・中日新聞・毎日新聞・NPO・市民活動団体・企業)
活動日数 180
支援対象者実人数 90
支援対象者延べ人数 150
参加ボランティア実人数 30
参加ボランティア延べ人数 60
本助成金による活動の成果
2020年より医療相談会などの活動を継続して開催してきたことで、日本の医療機関へ繋がる相談会や、行政機関にも様々な外国人支援制度が存在することなどの情報がラテンアメリカ系住民の中に浸透していることを実感できたことが一番の活動の成果となった。相談会開催地は、当初NPO愛伝舎・シェイクハンズ・可児国際交流協会の拠点で開催を予定していたが、隣接する地域のNPOや市民団体から、母国語で医師に直接相談できる機会が全くないのが現状なので、ぜひこの地域でも開催して欲しいという要望があり、亀山市、小牧市の団体と共に支援活動を進められることとなった。現地のNPOや市民団体のボランティアスタッフの協力を得て、温かい雰囲気の中で対面での相談会を開催できたことは、地域で暮らす外国人の安心の時間に繋がり、今後の健康管理の大切さを改めて確認する場となった。(3会場合計:医療相談36件 こころの相談20件 シャーガス病の検査32件中2件陽性)特に今回はコロナウィルスに感染した方の相談が多く、後遺症やワクチンへの不安、心理的経済的に追い詰められていることや、また子供の発達に不安を抱える保護者など多方面にわたる問題が多く寄せられた。医療相談のみでは対応できない事柄は、現地のNPOが労働局や行政等の支援に繋げるように連携を取り、今後の生活の立て直しを図るための足掛かりとなる相談会となった。コミュニティ外から通訳が入ったことで秘密の保持が図れ、多くの参加者が安心して相談ができた。また日本人も外国人も共に協力し合い地域を支える一員としての居場所を確立するためには、日本のシステムと外国人コミュニティを結ぶキーパーソンの存在が不可欠となる。精神保健分野に関する基礎講座を通じて、活動にあたっての個人情報の保護の重要性や精神医療の基礎知識、支援者自身のメンタルヘルスケアの保ち方などを学び、共に支えあう社会づくりを目指す意識が高まりつつあることも大きな成果となった。行政機関への報告会では、厚生労働省外国人雇用対策課や出入国在留管理庁の在留支援課に現場の声を届けることができ、今後行政機関からMAIKEN感染症専門家へのヒアリングが予定された。今回活動拠点を広げたことで、シャーガス病感染既知の母親が先天性感染の疑いを抱く娘を会場に同行したところ、感染を示唆する結果が得られ、更なる精査を指示したほか、他の兄弟について今後検査を受けるよう助言が出来た。
事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
コロナ禍が長期化し地方では感染者に対する差別や偏見が後を絶たず、特に外国人労働者の中でクラスターが発生する事案が多く見られ、行政機関からは外国人が集まる機会を減らすようにとの指導をもあり相談会の実施は困難を極めた。工場の生産調整の長期化や学校や保育園の閉鎖などによる、経済的な困窮や家庭のストレスから様々な不調を抱えて不安障害の症状を訴える人が増加しており、当初この事業を始めた時より相談する機会を求めている人が多くなっている。また言葉の壁から日本語でコロナに関する情報提供があっても理解ができず、ワクチン接種の予約が難しくあきらめてしまう外国人も多数存在した。本活動の中で見えてきた課題は、地域の中で「助けて」と言える外国人はそれなりの支援を受けられるが、抱え込んでしまって言い出せない人、生死にかかわるような問題を抱えていても表面化しない人が多い事である。そういった人達は、日本人スタッフが言葉を尽くして説明をしても聞く耳を持たないため、同じ外国人が地域の身近な隣人として見守ったり支えたりすることの役割が大変重要となる。これまでの活動の中で日系人のグループとの連携が進み、支援を必要とする人への周知が進んできているように感じている。特に外国人未成年者にとって日本人医師等の偉い人に直接話すことは怖くて無理だという意見が多くあったため、まずはコミュニティリーダーと相談者を繋ぎ、コミュニティリーダーからNPOさらには市行政へ支援に繋げられるよう、日本社会と外国人コミュニティを繋ぐキーパーソンへの支援・育成が不可欠と考え、月に一度オンラインにて、精神科医や専門家による講義やグループワークの時間を設けて、正しい知識を学ぶ機会を作るとともに、安心して地域で活動して頂くような取り組みを開始した。また、シャーガス病は母国では広く知られているが、日本の医師は知識がなく、日本で生まれた子供たちは熱帯感染症を知らない世代も増えてきている。しかし日本国内のラテンアメリカ系住民の中でシャーガス病の陽性者は確実に存在し、今回の検査でも母子感染からの陽性者が判明した。ラテンアメリカ系住民集住地区での検査の実施は今後も重要な課題だが、今現在どの機関からの支援もなくMAIKEN独自の活動として継続している。ただ一団体が地道に取り組んで解決できるレベルの内容ではなく、行政の背策として検討して頂けるよう積極的に報告会や講演会などに取り組みたい。
助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
http://www.maikenbrasil.com/
https://www.facebook.com/aidensya/posts/5124747587568453
寄付してくれた人へのメッセージ
赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン 居場所を失った人への緊急活動応援助成金により、ラテンアメリカ系住民集住地区において無料の医療相談会を開催することができました。皆様から頂いた温かいご支援に心より感謝を申し上げますとともに、今後も日本人も外国人も共に地域を支える一員として活躍できる社会を目指して活動を続けてまいります。