やどかりハウス(コロナ禍において生活困難に直面し、孤立している女性や母子のための一時宿泊を伴う、相談支援と社会資源創出事業)

団体名 特定非営利活動法人場作りネット

都道府県 長野県

助成額 1,963,867円

活動開始日 2021/4/1

活動終了日 2022/2/28

助成金で行った活動の概要
やどかりハウスは、女性や母子が(部屋の空き状況で男性も可能)ワンコインで一時宿泊でき、生活相談やコミュニティへつながることが出来ます。ユーザーは、子育てや介護に悩む女性や、家庭内の抑圧に苦しむ女性、不安定雇用で困窮している方などが多く、ほとんど方が孤立していました。多くの方々がすでに相談支援機関に繋がっていましたが、コロナウイルス感染拡大の影響もあり、より一層孤立は深まり家庭内の抑圧が高まってもいました。そういう困りごとを抱えた方が、やどかりハウスの宿泊や、おふるまいイベントを通して街のコミュニティに参加し、街の中にその問題が可視化されたことで、市民の中に新たなコミュニティが生まれ、様々な助けいあいの企画や場が生まれました。相互扶助の機運が高まり、官民を超えた相談機関の方々にも参加してもらうことで、相談機関の質も変わってきたと感じています。そうした実践的背景からも、相談支援窓口を機能させるための仕掛けを市民の中に作ること、また市民の相互扶助の力を増幅させる一助の活動となりました。具体的な活動は以下の通りです。・緊急的に宿泊場所がない方や、日常に閉塞感を感じている対象者へ、ワンコイン500円で気軽に泊まれる宿泊場所の提供。(最大10日間、ケースによって別途対応)・生活保護受給等の、制度利用が可能になるまでの空白期間に対しての宿泊場所の提供。・おふるまいイベント(食料を無料提供する炊き出しイベント)開催、食糧支援を行い相談支援に繋がるための機会を作り、また運営側として参加することで新たな居場所を創造する。・対象者にLINE、電話、対面による相談支援の実施。・対象者のそれぞれの困りごとに関して、適切な支援が可能な支援先へ紹介や同行支援。・様々な困りごとを抱える対象者の方への対応を可能にするため、更に広く支援機関や相談窓口の開拓と連携。・宿泊場所である犀の角で行われる各種イベントとの連携を図り、市民がつながる場や居場所の提供。

活動日数 334

支援対象者実人数 260

支援対象者延べ人数 460

参加ボランティア実人数 80

参加ボランティア延べ人数 160

本助成金による活動の成果
コロナ禍によって孤立が深まる中、LINEで、使い気軽に相談でき、一時宿泊ができるというやどかりハウスは、宿泊場所のある長野県上田市以外の、県内外からも問い合わせや利用がありました。公式アカウントを開設し、136名の方々にお友達登録をしていただきました。実際に宿泊を利用した方は(助成期間2022年4月~9月末)では18名、延べ宿泊者数は20名、宿泊数は44泊となっています。また、9月~2月末では長期宿泊を余儀なくされている困難ケースにおいて助成をいただき、5名が中期の滞在を経て生活保護制度等に繋がるなど成果がありました。利用者の世代は、10代後半~60代前半となっており、20代が34%と一番多く、属性は独身女性が一番多く、次いで学生、子育て世帯と続きました。20代では家族の病気や自身のライフプランが見えない等、様々な理由で家庭や日常が安心できない状況にあるケースが多く、30代以降は家庭を支える側としての息詰まりや、生活の中に暴力などの緊張状態、また生活困窮もみられました。20代や30代は日常の中で、相談機関が対応可能な時間に機会を作ることが難しいことや、そもそも公的機関への相談のハードルは高く、自殺の増加も問題になっています。本事業では入り口としてLINEでやり取りが出来ることで、心情的にもハードルを下げ、また宿泊場という具体的な支援策に気軽につながることが出来ることから、その後の伴走支援へのスムーズな移行が可能となりました。おふるまいイベントでは毎回100人以上の方に食事の提供を行い、やどかりハウス利用者も回を重ねるごとに参加者から共に運営する運営者となっていきました。イベントの狙いである支援する人、支援される人という枠は取り外され、最初は当事者として参加していた方が、新たな自分の居場所として活躍する姿も見られました。ボランティアでの参加も毎回多数の参加があり、食材の寄付や積極的な市民参加を促すことが出来たことも大きな成果だったと考えています。またこれまで相談支援と関りの無かった街の資源(ゲストハウス、劇場、映画館、飲食店など)が、相談支援と関り、出来ることを出し合う機会となったことで、次々と新たな居場所作りが発想されており(難民受け入れなど)本事業を通じて、街に相互扶助の力や感受性が高まったことは、大きな成果と感じています。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
本事業全体としては、これまで37名250泊の宿泊がありました。利用の理由としては「家庭不和」が最も多く次いで「逃げ場がない」「息抜き」でした。お一人お一人とお話をお聴きすると、コロナによって困り事が生まれたのではなく、もともと抱えていた困難がコロナによって、その出口を無くしたという印象でした。障害、介護、子育て、自立など、そもそも一人ではできないことが家庭の中に押し込められているように感じました。また相談機関はあるが、相談しても出口となる社会資源が無ければ問題解決がなされず放置されている現実もあるように感じました。本事業は、困りごとを抱えて人が街の中に現れることで、街が必要な機会や資源を作り出すことを目的として行い、一定の成果がありました。しかし、まだまだ家庭の中や「相談支援」の中に、様々な社会課題が押し込められていると考えられます。DVや虐待、子どもの自殺の数字にもそのことが表れていると考えます。そうしたことが起こらないように、人々の生活に近いところに気軽に逃げたり相談できたり、居られたりする場所を作っていく事は急務であると感じます。またその際に「気軽さ」というのは大切な要素でした。LINEを使い、話したくないことは話さなくてもよい気軽さを保障することも既存の相談支援にはできてないことだと感じます。また人々の相互扶助の力を高めていく事も、大きな課題です。相談窓口はどうしても制度などシステムに依存せねばならない状況であり、人々の生活から遠くにまります。人々の生活の中にこそ助け合う事の出来る資源や機会を創出せねばならないのであって、そのための取り組みが積極的に補助されることが望まれまれます。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=4903195899776789&id=362888717140886



寄付してくれた人へのメッセージ
やどかりハウスを行う中で、素敵な場面にたくさん遭遇することができました。自分たちの街に、自然に助け合うことが出来る場が出来たことは、貴重なことだったと思います。きっと事業が終わっても、私たちや関わった人達の中にそれは残り続け、また新たな助けいあいの輪が広がっていくことだろうと思います。この度は、本当にありがとうございました。