地域で居場所を失い、社会生活におけるさまざまな問題を抱えている人たちに寄り添い問題解決につなげるための相談支援事業

団体名 認定NPO法人フリースペースたまりば

都道府県 神奈川県

助成額 2,040,000円

活動開始日 2021/6/1

活動終了日 2022/3/31

助成金で行った活動の概要
当助成事業では、当法人が運営する食支援(フードパントリー、こども食堂)を求めて訪れた人たちのSOSをキャッチして、早急で適切な支援に繋げていくための相談支援事業を実施した。コミュニティスペースで行われる食支援を通じて、公的支援につながりにくい、あるいは十分に支援が行き届いていない困窮・孤立世帯の子ども・若者とその家族を発見し、支援につないでいった。 ●開催場所:コミュニティスペースえんくる(川崎市多摩区)。月・水・金・土 10:30-18:00に開所。フードパントリーを備え、月に3日多世代型こども食堂を開催。平日の放課後の時間は、子どもは飲み物1杯・お菓子1つ無料の子どもの居場所「こども☆きっさ」を開催。 ●周知方法:下記の方法にて、食支援と相談支援事業の周知を図った。・地域のフードドライブ活動(社会福祉協議会・民生委員児童委員協議会、生活者協同組合等が地域で月1回ずつ実施)でのチラシ配布・社会福祉協議会での福祉資金の貸付等の相談者へのチラシ配布依頼・子ども子育てネットワーク会議での福祉事務所・関係者への周知・川崎市子ども夢パークでのチラシ配架・SNSでの周知、コミュニケーション(公式LINEの運用、Facebook・Instagramでの発信) ●支援の方法:フードパントリーとこども食堂の利用者と現場統括責任者が日常的なコミュニケーションを交わし信頼関係を築きながら、公的支援につながりにくい、あるいは十分に支援が行き届いていない困窮・孤立世帯の子ども・若者とその家族を発見し、専門相談員(1回半日、週3日程度配置)につなぐ。専門相談員の相談・訪問・同行、関係機関との調整、ケースカンファレンス等を行うことで、地域の支援を活用し、生活状況を改善していく。・対象者  困窮・孤立世帯の子ども・若者とその家族 ●その他:地域の住民の参加する子どもの貧困と当事業の理解促進を図る勉強会を3回開催。福祉事務所からの視察受け入れ、社会福祉協議会への事業説明のための訪問等を行った。また、地域からの物品の寄付を募り、新入学準備応援として学用品等の支援、生活保護世帯から自立する若者への新生活応援支援等も実施した。

活動日数 161

支援対象者実人数 65

支援対象者延べ人数 1,359

参加ボランティア実人数 10

参加ボランティア延べ人数 91

本助成金による活動の成果
本事業では、食支援を利用している利用者がいかに深刻な事情を抱え、食支援以外の支援も必要しているかが明らかとなった。困難の状況も極めて多様で、かつ課題が複合しており、多機関連携による包括的な支援が必要であった。一方で、こうした困難は当初から語られたものではなく、フードパントリーやこども食堂に一定期間通い、徐々に常駐する現場統括責任者や、専門相談員と信頼関係を築き、深刻な状況を話しても良い気持ちになって初めて明らかとなった。本事業は地域の居場所として運営しているコミュニティスペースの中で、登録・審査を必要としない敷居の低い食支援をアウトリーチに、安心できる居場所として関係が定着することで、SOSを出しやすい相談支援事業として計画した。実際に実施してみて、それが非常に効果的であることが明らかとなった。また、社会福祉協議会、福祉事務所、地域で子どもの貧困に関心を持ち行動する住民と連携したことで、地域内で一定深刻な状況が地域課題として認識された。新入学、新生活応援の協力を通じて、関心を寄せる地域住民の参加が促進された。以下、具体的な相談事例と対応の一部を紹介する・保護者が疾患を抱えるヤングケアラーからのSOS。学校、児童相談所とケースカンファレンスを実施しながら多機関で見守り体制を築いて支援。・実家から離れて自活していた20代の娘、息子について新型コロナウィルスによる減収で生活がたちいかなくなっていると相談。(新型コロナウィルス感染症対応支援策の紹介。奨学金や進学時に借入した福祉資金の返済が難しいなどあり、法律家、社会福祉協議会、福祉事務所、医療機関等との連携で支援)・ひきこもりの若者との関わりに悩むひとり親からの相談ひきこもり状態の長男と発達障害のある次男を育てるひとり親からの相談。長男に、専門相談員が家庭訪問を重ねると共に、他機関連携でさまざまな支援制度を使えるようサポートした(連携先:社会福祉協議会、ひきこもり支援センター、生活困窮者自立支援制度等)・障害を持つ子どもを育てるひとり親からの相談。地域での対応状況を確認すると共に、臨床心理士が悩みをきき、精神面のサポート)・新型コロナウィルス感染症による勤務先の業績悪化に伴う減収で、経済的困難を抱えた子育て世帯からの相談。住宅ローン返済特例等支援策を紹介。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
本事業を通じて、相談者に寄り添う中で、いくつかの地域課題が見えてきた。今後は、資金獲得と政策提言を組み合わせ、以下の体制整備のために長期的に取り組むものとする。(1)新型コロナウィルス感染拡大下での緊急支援として行われた本事業であるが、寄せられた相談の多くは、コロナ禍以前の生活課題の顕在化であることが多かった。一見新型コロナの影響による減収も、丁寧に聞き取り経過を見れば、短期間の減収で生活が立ち行かなくなる以前からの生活基盤の脆弱さが潜在的要因として横たわっていた。今後は、継続的な事業として、地域に根ざして支援が行われることが必要である。(2)地域でこどもの貧困への関心が高まり、フードドライブ、こども食堂など、住民主体の食支援が広がりつつある。一方で、それらを活用する利用者の困難が必ずしも十分に受けとめられておらず、食支援以外の支援につながる流れが整備されていない。顕在化された食支援へのニーズの下に潜む、暮らし全体の困難を支える地域の体制整備が求められている。(3)地域で食支援を行う住民へのさまざまな研修が行われているが、今回明らかとなった支援ニーズは極めて多様で複合したものであり、ボランティアでは対応しきれるものではなかった。地域での専門職によるアウトリーチや敷居の低い相談を充実させる必要がある。(4)個人や世帯の抱える深刻な状況の全体像が明らかになるには、SOSを出しやすい関係性や居場所が必要であった。居場所とソーシャルワーク等相談支援を組み合わせた事業の体制整備が望まれる。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://www.tamariba.org/news-info/2106/
https://www.facebook.com/107524064373935/posts/pfbid02Y4HGAkSNHtGoor4izVoFWs9qbivikkNABzseoGC7q2qajPcK4hKT5fpj1Lb5ECnZl/?d=n



寄付してくれた人へのメッセージ
この度は、地域で声を上げることもできず困難な状況に置かれている、こどもたち親たちに支援届けるために、ご寄付を活用させていただきました。「ありがたいです」「ほっとしました」「温かい気持ちをいただきました」、そんなお声をたくさんいただけた事業でした。ご寄付をいただきました皆様、ありがとうございました。