親と子のためのオンライン居場所&キャリア教育プログラム開発及び普及

団体名 特定非営利活動法人 若者国際支援協会

都道府県 大阪府

助成額 1,990,000円

活動開始日 2020/12/1

活動終了日 2021/12/31

助成金で行った活動の概要
本事業ではコロナ禍に起因する進路への不安、対人恐怖、また家族関係の悪化、不登校・中退、ひきこもりなどの悩みを有する、学齢期から中高齢の幅広い市民に顕在化している生活課題の改善を目的として、オンラインのプラットフォーム形成(居場所作り)を総合的な教育プログラムの開発と普及によって実現した。具体的には、①月1回の家族会(開催場所|大阪市ボランティア情報センター及びコロナ禍による活動制限の際にはオンラインZOOM)の開催(計12回)、②オンラインワークショップC-BED(Community-Based Enterprise Development)ダイアローグと呼称する自己分析プログラムの実施、③そのワークショップの入口となるインテイク段階では、さまざまなボランティア活動を組み合わせ相談者を主体的・一般的な市民として包摂する、独自のインクルッシブボランティアの理念、即ち「誰もがボランティア活動に参加しやすくするため」の戦略的対人支援(後述)の実施、④C-BEDダイアローグを受講した参加者へのフォローアップ(6月以降月2回)を開催した。ノルウェーで誕生した家族療法の手法「リフレクティング」を応用した「リフレクティング・ダイアローグ」を取り入れ、対人恐怖やプライバシーが気になってオンライン・オフラインを問わず対面や通話ができない方でも、気軽にテキスト入力のみで参加できるインテイクの仕組みを開発し、これを①の家族会と組み合わせて親子関係への介入手法に導入した。さらに、⑤フォローアップは、生活改善のために導入した新しい習慣を継続することを目的としたセルフ・ヘルプワーク(オンライン)を開発し、これを実施した。上記の教育プログラムの開発とその利用者については、主に大阪、兵庫、奈良、京都を中心とした関西圏で、関係する自治体(大阪府、大阪市、各区)の保健福祉センター、社会福祉協議会、及び不登校・ひきこもりの家族会、その他のボランティア団体、事業者らと連携しながらこれを受け入れ、あるいは逆に他の支援機関へ照会するなど連携を行った。また、特に家庭での学習をきっかけに訪問支援・来所支援をするなどして、当事業の効果的な実施に尽力した。

活動日数 240

支援対象者実人数 192

支援対象者延べ人数 960

参加ボランティア実人数 32

参加ボランティア延べ人数 160

本助成金による活動の成果
成果1=当初の目標であった支援実数90件を超える実績12か月間で96件の家庭(n=192名)が当プログラムを利用し、各家庭の保護者1名、子1名の2名を原則対象として本プログラムを実施した。大阪、兵庫、奈良、京都を中心とした関西圏で、関係する自治体(大阪府、大阪市、各区)の保健福祉センター、社会福祉協議会、及び不登校・ひきこもりの家族会、大阪市ボランティア情報センター、その他のボランティア団体、事業者ら、併せて14団体・機関と相談者の照会(入口ー出口支援)の連携をしながら本事業を実施することができた。群馬県と東京都では各1団体との連携が進んでいる。成果2=参加者による高評価|参加満足度88%12月の事業終了後に実施した利用者へのアンケート(有効回答 n=172)では、88%の利用者が当事業への参加に満足を示し(5-大変、満足した、4-満足した、3ーふつう、2ーやや不満であった、1-不満であったのうち、5もしくは4)、「やや不満であった」以下は2名に留まる高い評価を得ることができた。また、「生活に何らかの前向きな改善が実感できた」と回答したものは79%に及び、生活改善への効果が上がった。具体的には、「自分が何をすべきかがわかった」といった「日常の取り組みの方向づけに成功した」(28%)、「家族関係が改善した」(22%)、「支援機関(サポートステーション)やハローワークなどに相談をするようになった」(17%)といった変化がもたらしたことがわかった。成果3=独自のひきこもり支援手法を開発戦略的支援とは、「不登校」「ひきこもり」「家庭内暴力」といった政策用語によるラベリングを行わずに、当団体が実施している様々なボランティア活動に参加することで当事者たちと関係性を築き始めるインテイク手法であり、C-BED Dialogueでは「自分の問題を解決する」という問題に焦点を当てるのではなく、当事者が好きなこと、得意なことに着目するストレングス・アプローチを採用するなど、独自のプログラムを開発できたことは大きな成果であった。

事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
課題1=開発は大成功したが、普及は不十分であった96件の家族が本プログラムに参加する成果を挙げてることができたが、これは実質的には既存の当団体のネットワークから相談者の照会を受けた方々に当事業のプログラムを案内しながら達成した数値であって、たとえば他団体の家族会などに当プログラムを実施してもらうケースは2団体に留まり、事業期間内に2団体ともプログラムを終了できていない状況となっている。今後は本プログラムを他団体が応用していけるように、使用・運用方法のガイドラインをまとめてPDFなどで公開するとともともに、本プログラムの教材そのものもオンラインで公開していくなど、積極的な普及活動を行う必要が生じている。課題2=当初予定していた、SNSを活用した広報は不十分であった当プログラムを開発ー試験運用している期間、参加者から「最初はお互い見知っている人同士で実施をしたい」「インターネットから不特定多数の人が参加すると、何かあったときにフォローアップができない」といったトラブルを危惧する声が多くあり、結果としてインターネットを通じだ募集は行わず、連携している支援機関・団体が把握している家族が参加することとなった。しかし、本事業の実施の結果、以下の点以外は大きなトラブルは生じなかったために、以降は積極的に広報活動をしていきたい。課題3=参加者の参加モチベーションが低調なケース具体的な数値は取らなかったが、モデレーションをしているボランティア間でたびたび会議で共有され問題化していた事態は、登録した参加者の一部が遅刻する、直前で参加をお休みする、無断で参加しない選択をするなど、参加のモチベーションが低調であるケースであり、結果として他の参加者にリスケジューリングの負担がかかったり、参加姿勢を後ろ向きにするような結果を招いた点である。参加オリエンテーションの段階でアイスブレイクをする、欠席に対する扱いなどを事前に説明し確認するなどの対策が必要となっている。全5回のモジュールのうち、4回目までで何等かの理由から終了されたケースが約20件程度あった。

助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
https://wakamono-isa.com/c-bed
https://wakamono-isa.com/archives/6498



寄付してくれた人へのメッセージ
2020年、日本では2万1,077人の自殺が発生し、特に女性は2019年から934人増加、若年層に至っては小学生が15人、中学生が145人、高校生338人の合計498人に上り、1978年の統計、学齢期の自殺者数は最多となりました。これまでの多くの支援はひきこもり・不登校といった言葉で若者たちに支援の対象としてきましたが、なかなか実際の支援-相談にはつながらない、といったジレンマがありました。皆様からいただいた寄付は、そのような子供・若者たちが支援の対象となるのではなく、主体的に行動を起こすことができるように、「好きな文化」、「得意としていること」、「興味・関心」など、その「強み」を引き出すことができるC-BEDという教育プログラムに結実しました。国連―ILO(国際労働機関)が開発したコンセプトを活用し、私たちが独自の開発を行った教材です。これからは、このプログラムの普及に本格的に乗り出したいと考えています。