都道府県 宮城県
助成額 2,391,000円
活動開始日 2021/4/1
活動終了日 2021/12/31
助成金で行った活動の概要
2021年4月から同年12月までの助成事業は、以下の三つの柱を立てて、コロナ禍で困窮状態に陥っているホームレスに対する緊急支援および居場所を回復する支援を実施しました。(1)すでに居場所を失っている方に対しては、今日を生きるための食料支援と、必要な支援物資の支援、居場所を回復するための情報提供の支援、当法人が運営するシェルター、および無料低額宿泊所への誘導。(2)居場所を失くす危険がある方に対しては、居場所を失わないために必要な、食料支援、および居場所を失わないために必要な情報提供の支援。(3)居場所を失くす寸前(コロナウイルスの影響によって家賃滞納等に陥り、そのままの生活を続けていたら居場所がなくなる方)に対しては、食料支援、居場所の回復のために必要な同行支援。この事業によって、ホームレスが、再び、生きる活力・働く活力を回復するための支援をしました。これら三つに必要なことは、迅速な支援です。そこで、相談があったその日に、出来る限り、その相談者と直接対話して、必要な支援を迅速におこなう体制を構築しました。生活に困窮した方々がSOSを発信した場合には、緊急で相談できる体制が必要不可欠です。相談する困窮者やホームレスは、今日、食べることができない、どこに相談に行けばよいかわからない、と切実です。コロナ危機以前は、当法人が運営している生活困窮者の相談センター「ヘルプ!みやぎ」への電話により、相談を受け付けて、翌日などに相談に応じてきました。コロナ危機以降は、緊急性を要する場合、本人に直接会いに行き、相談に応じています。この活動を継続しました。また、居場所を失った方が、居場所を再設定したとしても、何もない状態から再出発しなければなりません。そのため、必要最低限の什器備品、布団一式を、助成金を活用して無償で提供しました。具体的には、居場所を再設定したいという相談があった方で、私たちのシェルターおよび無料定額宿泊所に入所した方に対して、必要最低限の生活用品を提供することができました。さらに、居場所を失った方が、居場所を確保した後、アフターフォローを継続し、安心して社会生活を送ることができる基盤を整えます。居場所を失った方が、生きる活力を取り戻すことが、私たちの目的です。
活動日数 270
支援対象者実人数 101
支援対象者延べ人数 2624
本助成金による活動の成果
先に述べた三つの柱の具体的な支援として、支援対象者の実数101人、延べ2600人を超えるホームレス・生活困窮者の支援を実施しました。具体的には、以下の活動を2人体制で週7日(延べ270日)実施しました。(1)緊急出張面談:当法人に電話相談してきた居場所を失った方に対して、スタッフが直接その方に会いに行き、相談に応じ、必要な情報を提供しました。 具体的には、当法人の支援活動のチラシに相談窓口電話番号とスタッフの緊急用連絡先の携帯電話番号の2つを記載し、いつでもSOSの電話を受ける体制を整えました。この緊急連絡用携帯に、10名からの緊急のSOSの相談電話がありました。電話で話を直接聞き取り、必要に応じて直接会いに行き、相談に応じました。具体的には、食料を支援し、支援活動への案内および居宅支援の提案を行いました。(2)当法人の支援活動時の相談:(月曜日:衛生改善事業、水曜日:夜まわり・深夜夜まわり、木曜日:大人食堂、土曜日:自立支援セミナー、有償清掃ボランティア作業、炊き出し)において、相談および生活必需品を提供しました。具体的には、助成期間中に延べ1400人の支援の実施および相談に応じた。夜まわり(20時スタート)と深夜夜まわり(24時スタート)を月4回実施し、真夜中に仙台駅周辺で寝泊まりしているホームレスに声がけ、寝ている当事者にはチラシを配布し、必要な情報を提供した。毎回、数名の新規のホームレスとの出会いがありました。当法人の定例の支援活動(衛生改善事業、大人食堂、炊き出し、セミナー)内で、ホームレスの相談に応じた。大人食堂では、2021年4月以降に路上生活になったという39人の聞き取りを行った。その内13人のホームレスの居宅支援に結びつけることができました。(3)緊急出張支援:10人の緊急SOSの電話を受けて、出張対面による相談および支援を実施しました。(4)居場所回復の際の什器備品・布団・生活セットの支援。助成事業を通じて、13名のホームレスの居宅支援を行いました。その居宅支援を実施する中で、本助成金を活用して、洗濯機、冷蔵庫、生活セットを無償で提供することができました。また、支援した生活必需品は3項目39品目です。このような助成金を活用できたことで、ホームレスは何もない状態で部屋に入所したとしても、居場所を獲得したその日から安心して生活することができました。(5)13名の居宅支援を行った方に対して、1日1回の訪問を毎日行い、自立に必要な情報提供等の支援を行いました。また、同行支援を実施しました。具体的には、生活保護の申請手続き同行、債務整理のための法テラス同行、病院同行を行いました。(6)2021年4月から12月までの助成期間中に出会った路上生活者・生活困窮者の傾向をみると、まずは、30代と40代の困窮者が多いという傾向がみられていました。中でも、非正規労働で就労してきた方で、コロナ禍において仕事が減少し、生活困窮となった方の相談が後を断ちませんでした。 こうした相談者の中でも、コロナが地域社会へ影響を及ぼしていることがわかってきました。具体的な事例としては、宮城県内の地域で酒屋を40年以上家族経営していた方がいました。その方は、大学卒業後、家業を手伝ってきましたが、コロナによる緊急事態宣言等により、酒の卸の仕事が激減し、家族全員分の売り上げることができなくなり、仙台で路上生活となった方でした。まさか自分がホームレスになるとは思わず、今後どうしてよいかわからない、という相談でした。この方は、コロナ禍がなければ、路上生活になることはなかった方です。コロナは、地域社会の経済を蝕み、これまで地域社会のなかでなんとか生活してきた方の生活基盤を失わせていることが浮き彫りになっています。コロナが長引けば、今後もこうした地域で生活できないという方が増加することが予想されます。 そんな中、コロナ禍によりホームレスとなった方を当方人で2名雇用しました。その方々は、この助成事業を通して当法人の居宅支援を受け、さらに生活保護を受給し、生活の基盤を再構築し、運転免許を取得することができました。本人が、支援されたことを支援することで返したいという強い要望と熱意があり、ホームレス支援と居宅支援担当として、現在、がんばって仕事をしています。
事業を実施する中で見えてきた課題と今後の取り組み
第1回と第2回の助成金事業を通して、多くの路上生活の方の相談に応じ、居宅支援を実施してきました。そこからみえてきた課題は、ホームレスの社会的な関係の取り戻しの困難さです。ホームレスは、家族との関係、職場との関係、友人関係といった社会的な関係が希薄です。ほとんどの社会的関係を断絶しているケースが多くあります。そうした社会関係が断絶した中で、私たちとの出会いがあります。こうした社会的関係が断絶している状態で、私たちの支援を受けて、居場所を獲得したとしても、社会関係は断絶したままです。いわゆる「ハウスレス」は回復したとしても、ホームレスが生きていくための「ホーム」の回復には至っていません。この「ホーム」の回復には時間と社会的資源が必要です。 そのようにみると、私たちの社会において、「ホーム」を失っている人は、ホームレスに留まりません。例えば、生活保護を受給している方でも、住まいと食事の心配はないものの、地域社会および人間関係からは孤立している方が多くいます。また、それ以外でも、「ホーム」を失っている人は潜在的に多くいることが予想されます。そこで、私たちは、「ホーム」の取り戻し活動を、今後の活動の柱にしていきます。 この助成事業を通じて、ホームレスおよび生活困窮者が、自らが生きる「ホーム」の回復をいかにして実現していくのかという課題がみえてきました。そこで、今後は、この課題を地域共生社会の実現という枠組みで捉え、当法人が様々なプログラムを実行することで、ホームレスのホームの取り戻しを行っていきたいと思っております。
助成決定した活動を報告したSNSやホームページのURL
http://www.yomawari.net
http://www.yomawari.net/info/59232/
寄付してくれた人へのメッセージ
コロナ禍により、ホームレスになられた方、なりそうな方に対して、緊急支援活動を行って参りました。皆様のご賛同、ご寄附により支援活動を継続していけますことを大変有難く思っております。今後もこのような状況が続くかと思いますので、変わらずご支援いただけましたら幸甚に存じます。何卒宜しくお願い申し上げます。